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普段の生活で家の中を歩く経路のことを専門用語で「生活動線」と呼び、スムーズな生活動線の家は年を取っても快適に暮らせます。中でも理想といわれているのが、「回遊動線」と呼ばれるものです。回遊動線とは簡単にいえば、行き止まりなく家の中をぐるぐると回れる経路です。
例えばアイランド型というスタイルのキッチンがあります。アイランド=島の名前の通り、どこの壁にも接していない、離れ小島のようなキッチンです。アイランド型キッチンというと、おしゃれなキッチンというイメージがありますが、回遊動線を持つ素晴らしいバリアフリーキッチンでもあります。
数年前、私は足をけがして1年ほど車いすで生活していたことがありました。そのときに困ったのが、キッチンの行き止まりです。そのころのわが家のキッチンは、片側が壁にくっついた対面キッチンでしたので、車いすでキッチンの奥まで進むと、バックで戻る必要がありました。しかしキッチンでバックするというのはとても怖く、また方向がうまく定まらないので、ステップをあちこちにぶつけてしまい、キッチンや冷蔵庫をでこぼこにしてしまいました。
そんなとき、回遊動線のアイランド型キッチンなら、行き止まりがないので車いすをバックさせる必要がありません。どちらに行くにも周囲をぐるぐる回って、すっと通り抜けができます。また回遊動線はどこへ行くにも、大回りすることなく最短距離で移動できるので、普段の家事効率もぐんと上がります。
アイランド型キッチンの写真を見ると、壁がないオープンなデザインが多いので、油跳ねや調理の臭いが気になる人もいるでしょう。そんなときはキッチンを壁で囲えばいいのです。大切なことはスムーズに移動できる経路であること。生活動線を見直すことで、この先ずっと快適に便利に暮らせる住まいになります。